ビクトル・ガルシア「スペインの幸せ」
エル カステリャーノ というお店

老舗スペイン料理店を営むスペイン人の父を持ち、2012年に「アロセリア・サル イ アモール」を 代官山にオープン。 その後銀座、中目黒、丸の内にも店舗を広げ、その内2店舗でミシュラン・ビブグルマンを獲得する。
こんにちは、今日は青山にあるエル カステリャーノというお店のお話しをしてみます。
青山の老舗のスペインレストラン、1977年にオープンしてるので、48年ぐらい続くお店。僕が生まれるずっと前からあるお店。
ここはスペイン人である僕の父・ビセンテが作ったお店です。
レストランというか、バルみたいな食堂みたいなお店。ていうか、スペインそのものなんです。
内装や雰囲気はもちろん、働いてる人もほとんどスペイン人。僕の父なんてずっと日本語カタコトなので、接客もスペイン語と日本語のミックス。
よく海外旅行行ってレストラン入った時に感じる、あの 、”上手く頼みたいもの頼めるかな” とか ”さっき店員さんに伝えたことちゃんと分かってくれたかな” とかのソワソワ感みたいなの。あの感じが東京のど真ん中でがっつり感じられるお店なんです。
好きな人は大好きで、合わない人は全然合わないお店でした。
スペイン人が始めたスペインレストランでは日本最古のお店なので、在日のスペイン人や外国人も一杯来ます。
僕の父は頑固オヤジなので、予約の時間に揃わないお客様とかお店から追い出しちゃうし。気に食わないオーダーとか全然取ってくれない。
でもお客様が現金の持ち合わせなくて困ってたら「今度でいいよ!」とか言って奢っちゃったりする。
日本に来たけど仕事が無くて困ってるスペイン人が皆尋ねてきて、一旦働く。
あとあと聞いたら、「エル カステリャーノに行ってビセンテに相談してみろ、彼がなんとかしてくれる」 みたいなことを大使館とかでも言われてたとか。
どこを切り取っても映画のワンシーンみたいなレストラン。
お料理はスペインの本当の家庭料理。今は珍しくないけど、当時は珍しいウサギのお肉とか豆料理とか羊肉とかいっぱいあって、僕も子供の時からエル カステリャーノのお料理が1番好きでした。
僕は元々、レストラン業に興味はなくて普通に学生をしてました。
ある日、父のお店に客として行った時のこと。
お客様のうちの1人が誕生日で、父がバースデーケーキを出しながら、お店にいる全てのお客様にハッピーバースデーの歌を歌わせて、大合唱。誕生日の人は大喜び。みんなも幸せそうで。
あのシーンがとてもカッコよくて。
実はこれが僕がレストラン業を志したキッカケなんです。
そこからは父のお店を手伝ってました。もちろん頑固オヤジの息子も頑固なのでケンカばっかり。
2代目になるつもりでしたが結局自分でお店をやりたくなってしまい、僕は父のお店から離れました。
僕は今スペインレストランを4店舗やってます。
どこで経営学んだの? てたまに聞かれますが、完全に独学で日々悪戦苦闘してます。
エル カステリャーノに”経営” て概念は無かったので、何も学べませんでした。レジもぐちゃぐちゃだし。売上管理とかないし。
でも、接客の精神とかスペイン料理やお客様への愛とか、レストランのプライドとか、完全にエルカステリャーノと父から受け継いでます。
子供の時から教わってきたその精神で僕の会社は成り立ってるんです。
父は2024年に他界して、これからは知人であるエミリオさんていうスペイン人がお店を続けてくれることになりました。彼のお陰でエル カステリャーノは存続します。
僕が継ぐべきだと悩みましたが、お店への想いがあり過ぎて継げませんでした。
“父のお店”のままがよかったんだと思います。
自分が継いで、やり方や料理を色々変えてしまうのを自分で見たくない感じでした。
新しくなるけど変わらないエル カステリャーノをこれからも宜しくお願いします。
エル カステリャーノ
03-3407-7197
東京都渋谷区渋谷2-9-12
インテリックス青山通ビル2F
老舗スペイン料理店を営むスペイン人の父を持ち、2012年に「アロセリア・サル イ アモール」を 代官山にオープン。 その後銀座、中目黒、丸の内にも店舗を広げ、その内2店舗でミシュラン・ビブグルマンを獲得する。
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