作元典子「スペインの美味しい!楽しい!」
スペインの生ハム

はじめまして。作元典子と申します。グランジャポンさんのコラムを書かせていただくことになりました。どうぞ宜しくお願いいたします。
私は西麻布で主人と一緒にフェルミンチョというスペインレストランをしています。今年で14年目になります。その前までは私たちはスペインで生活していました。
コラムを通してスペインの美味しいもの、楽しいもの、いろいろとお伝えできればと思います。
この数年、生ハムのコルタドーラ(生ハムをカットする人)として活動もしております。先月、ASICI(イベリコ豚インタープロフェッショナル協会)とJCHA(日本生ハム協会)と共同の、日本では初のイベリコハムマスタークラスのセミナーに参加してきました。2日間で座学と、3〜4人でグループになり原木1本丸々切り方を学べるというものでした。スペインからコルタドーラのマエストラ(生ハムカットの先生)が来てくださり、とても濃い2日間でした。なかなか最後まで切り方を学べるチャンスはないので、知りたかったことなど聞けるとても良い機会となりました。



生ハムについては今後も書いて行きたいと思いますが、皆さんは生ハムと聞いてどのような生ハムを想像しますか?スーパーで見かける、日本製の生ハムでしょうか?イタリア、フランス、スペイン等ヨーロッパ産の生ハムでしょうか?いろいろあると思います。全て生ハムという呼び方でまとめられていますが、日本式の生ハムとヨーロッパ産の生ハムでは使用する部位や製造方法も異なります。(※日本でもヨーロッパのように長期熟成で造る生産者もいます)
スペインやヨーロッパで言う生ハムは、塩蔵して長期熟成したものを言います。少なくとも9ヶ月は熟成させます。長期熟成で水分が抜けるため仕上がりの歩留は約60%。そして2000年以上前から造られていたという歴史があります。
一方、日本式の生ハムは熟成無しかしたとしても短期間だけ。スモークしたものもあります。1980年頃にでき、製造方法の違いなどにもより歩留は実は100%以上なんです。
日本では、生ハムは発酵食品である、と間違えた解釈をしている方もいるようです。
今回のマスタークラスセミナーで、マエストラが、カットした時の歩留の話をしていました。大体原木の50%が、上手なコルタドールがカットしたときの歩留(食べれる部分)です。その他は外皮や、酸化した脂身、骨、ヒヅメなどです。日本に到着したものは、もう少し歩留が良くないかもしれない、40%ちょっとかもしれない、と言っていました。いかに歩留よく、上手なカットをすることが大事なんです。コルタドールの腕にかかります。

「生ハム」という言葉は、ヨーロッパ産の長期熟成ハムにも日本式のほぼ熟成されていないハムと、両方に同じように呼ばれます。何故ヨーロッパ産の生ハムの方が日本式のと値段が全然違うのか。もちろん味わいも全然違います。食べると幸せを感じる『ムード フード』である長期熟成ハム。こんな美味しいものがあるんです、スペインバルやレストランで見つけたら是非食べてみて下さい!
昨年末からASICI×JCHAの『イベリコセンスを呼び覚ませ、日本』というキャンペーンがスタートしました。マエストラが、『一口スライスを食べて、ずっと噛んでいたいような、ああ、もっと食べたいな、美味しいな、幸せだな、誰かと一緒に食べたいな、と感じる、これをイベリコセンスと私たちは呼んでいる』と言っていました。
先日、2月9日に能登復興支援チャリティーイベント第2回目を致しました。今回のイベントは3月3日に能登へ炊き出しに行くためにあてさせて頂きます。この日はハモン・デ・ベジョータ100イベリコとハモン・デ・セボ・デ・カンポ・イベリコの食べ比べができるという贅沢なイベントとなりました。
多くの方々に応援して頂きました。ありがとうございました。炊き出しの続きのお話は次回のFermintxoで!