永田枝理子「北スペイン探検隊!」
ガリシアのハロウィンがなかなか怖い

こんにちは!北スペイン料理研究家、スペイン語通訳・翻訳家のErikoです。
もうすぐハロウィンですね。
スペインでは、ハロウィンは日本同様「アメリカ生まれのお祝い」として商業的なイベントの意味合いが強く、映画やテレビやネットなどで見るような「トリックオアトリート!」の掛け声でお菓子がもらえるといった、子供達が楽しむイベントとして認知されています。
しかし、本気のハロウィンを祝う場所が、スペインにあるのをご存知ですか・・・?
それは、スペイン最西端。「スペインの食の貯蔵庫」「満腹の国」そして世界三大キリスト教の巡礼路カミーノ・デ・サンティアゴの終着地点として知られる、ガリシア州です。
ガリシア州はスペイン全土でもっとも土着宗教が根強く、キリスト教の宣教が困難な土地だった歴史があります。
そして今もなお、カトリックの祭りが土着宗教のお祝いと混じり特殊な形・期間で祝う、キリスト教にはない自然への畏敬の念を持つなど、ガリシアにはケルト文化や異教の考えが生きています。
サマイン、夏が死ぬ日。
「緑濃い深い森に満ちる重たい霧、遠くに響く獣の咆哮と、一斉に飛び立つ鳥の羽音、草を掻き分け近づいてくる何者かの足音・・・・」
そんなダークなシーンが似合うガリシア内陸。
苔むした石造りの廃墟が暗い森の中に静かに佇む様子などは、地中海沿岸や南部の明るいスペインのイメージとは180度異なります。
10月31日、ガリシアではケルト文化から何千年も続く「ケルトの新年」サマインを祝います。
サマインは、キリスト教が到来する前にヨーロッパを支配していた異教の時代の最も重要な祭りと言われ、10月31日から 11月1日の夜に収穫の終わりを祝うもので、暗い季節(11月〜)の「ケルトの新年」と考えられていました。
これが、現在のハロウィーンの起源の一つとして考えられています。
古い年から新しい年へ、そして華やかな春夏を過ぎ、暗い秋冬へ入る入り口。
「別の世界への入り口」とも考えられ、この日は死者たちがこの世に現れ、生者たちが祖先と触れ合うことができる一日とされました・・・。
獣の姿をして、亡霊の目を惑わす
31日の夜、山や村や港には祖先だけではなく、多くの亡霊、悪霊が行き来すると信じられていました。
夕暮れが近づくと、ケルトの僧たちは悪霊を追い払うための聖なる木の枝をさまざまな場所に積み重ねて火をつけて廻ります。
人々は、動物の毛皮や獣の頭部を模したマスクを被り亡霊に気づかれないように体を覆いました。
ガリシアの土地にかぼちゃが育つようになる前のケルトの時代は、敵の頭蓋骨を綺麗にし中に火を入れたものを悪霊除けとして使用していたことから、人々はカブの内部をくり抜いて中に燃えた石炭を入れたものを置いて大切な個人が自分の場所にたどり着けるようにしたり、または頭蓋骨同様、悪霊から身を守ったりしたそうです。
時代が移り変わるにつれ、これが恐ろしい形相に切り抜かれたかぼちゃに変わります。
妖精かゴブリンか
二つの世界のドアが開くこの日、亡霊だけではなく、道には妖精やゴブリンや、その他さまざまなこの世のものではないものたちが出現するとされ、恐れる人々は家の扉を固く閉め、外に出ないようにしていました。
勇気のある人は扉を開けてみて、そこにいたのが妖精なら次の年は幸福に、もしそこにいるのが妖怪なら次の年は不幸になるという言い伝えも。
絶対に出遭ってはいけない行列
生きた罪人が、後ろに死人たちを引き連れ沈黙で進む行列で、これに出逢ってしまうとその行列を引き連れた罪人に代わり、この行列を引き連れていかなくてはいけません。
次にあなたがこの行列の先導から解放されるのはいつのことか、それは次にこの行列に出逢う人間がいる時まで・・・・
もし10月31日にガリシアに行くことがあれば、夜の外出はお気をつけて。
頭からフードを深くかぶって、あなたが生きている人間であることが、違う世界から来たみんなにばれませんように・・・