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Something Special ~おいしいのその先に~

永田枝理子「北スペイン探検隊!」
丸の内がバスクになった!

丸の内がバスクになった!
永田枝理子

永田枝理子

2003年に北スペインの古都ブルゴスを訪れて以来北部の文化、食に魅了され、現地で食べたものや見てきたものをシェアするべくブログ「GreenSpainPlus」を始める。12年間スペインワイン販売に携わり、現在は北スペイン料理研究家としておうちで簡単に楽しめるお料理を発信中。スペイン語講師としても200名以上に教えた経験を持つ。

  • Green Spain Plus
  • @erikogreenspain:Instagram

こんにちは!はじめまして、北スペイン料理研究家、スペイン語通訳・翻訳家のErikoと申します。
2003年に初渡西して以来北スペインの魅力にどっぷりハマり、2010年から北スペインの観光情報や食文化、スペイン語学習について発信するブログ「Green Spain Plus(グリーンスペインプラス)」を書いています。

こちらのコラムでは、北スペインの美味しいものや、スペイン語の魅力についてお話ししていけたらと思っております。

先日東京丸の内の新丸ビルで、こんなイベントに参加しました。

「丸の内ハウス バル ホッピング」
世界屈指の美食の街、バルの聖地と呼ばれるスペイン北部バスク地方の有名シェフと新丸ビルのコラボレーション

新丸ビルの7階フロアの11店舗と、バスクからこのイベントのために来日した4名の有名シェフがコラボ、
コラボピンチョスと各店のオリジナルピンチョスの食べ歩きが、まさにサンセバスティアン旧市街を巡るように体験できるとても素敵なイベントで、期間(11月10日〜25日)中、10日〜12日はシェフたちもキッチンに立ったり、フロアでピンチョス巡りをするとのことで、私はシェフたちの通訳としてお手伝いに伺いました。
(11月25日(土)が最終日なので、シェフたちはもういないのですが、ぜひお時間ある方はバルホッピングを楽しんできてください!)

さて、今回来日していたのは、HIKA(イカ)のロベルト(スペイン版ミシュラン・レプソル太陽2つ)、Kokotxa(ココチャ)のダニ(ミシュラン1つ星、レプソル太陽2つ)、Arrea!(アレア!)のエドルタ(ミシュラン1つ星、レプソル太陽2つ)、KAI Sushi Bar(カイ・スシバー)のセバスティアン。

全員が、世界規模でファンが多い素晴らしいシェフたちです。
イベントに行って食べたよ!という方ももしかしたらいらっしゃると思うのですが、
今回改めて感動した北スペインならではの逸品をご紹介させてください。

Alubias de Tolosa アルビアス・デ・トロサ
バスク自治州、サンセバスティアンがあるギプスコア県の内陸に位置するトロサという町で作られるトロサ豆(黒いんげん豆)の煮込みです。

バスク、美食の地というキーワードだと、工夫が凝らされた美しいピンチョスがずらっとバーカウンターに並ぶ光景や高級レストランをイメージしますが、
実はこの、飾りっ気のない素朴なお豆の煮込みもバスクの顔のひとつです。

トロサ豆の煮込みは、主にバスク内陸の家庭やソシエダ・ガストロノミカ(地域の人が集って料理を作り食べる美食倶楽部)などでは定番料理で、特に冬の寒い時期に家族や仲間が集まり、その年のトロサ豆の収穫を祝い味わいます。

バスク語ではtolosako babarruna(トロサコ・ババルナ)、皮が薄く、ゆっくり煮込むと味わい深くまるでバターのように滑らかな食感が特徴的なお豆です。

お豆にはSacramento(秘蹟)と呼ばれる付け合わせ(豚のばら肉を煮たもの、チョリソ、モルシージャなど)を添えるのが定番です。

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秘跡とは、「カトリック教会で執り行われるキリストの神秘を目に見える形で現在化する特別な儀礼」(Wikipediaより)のことですが、お豆の添え物がなぜ仰々しい「秘跡」という名前で呼ばれることになったか・・

昔々、バスク内陸の貧しい村々では、お豆と野菜のみを煮て食べることがほとんどで、高価な肉製品を添えることができる家庭はほぼありませんでした。チョリソーやモルシージャを添えることができたのは、裕福な司祭の家のみだったことから、添え物が秘跡の一つのように呼ばれた、というのがもっとも濃厚な説のようです。(諸説あります)
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今回、このトロサ豆の煮込みを仕込んだのは、HIKAのロベルトさん。
1968年ベアサイン生まれ、1992年から2017年までトロサの名レストラン「フロントン」で責任者を務め、現在はチャコリワイナリー「HIKA」併設の同名のレストランを監修しています。

「彼の豆料理は特別」と人気を博し、自身でも原産地呼称認定のトロサ豆を栽培する作り手でもあり、豆に関する書籍も発売するなど、まさにバスクの豆料理の大先生だったのです。

そんな大先生が今回初来日し、東京の真ん中煌びやかな新丸ビルの和食屋さんmusmusさんのキッチンで、絶品のお豆を炊いてくれたのでした・・・。

びっくりしました。本当に本当に、水で煮てお塩入れただけのシンプルな作り方なのに、魔法がかかったように美味しかったです。

実は、彼の元でバスク料理を学んだ日本人シェフがいます。
現在東京下北沢で「TauLa」を営む高橋シェフです。今度お豆パーティ(Alubiadaと言うらしいです)しましょ〜!

最後に、今回のイベントの企画に携わったのは長年の「北スペイン友達」、榎奥マコト君。現在はサンセバスティアンに拠点を置き、個人・企業の旅や視察のコーディネート、プロモーションに携わるとともに、サンセバスティアンがホームのサッカーチーム「レアル・ソシエダ」の広報としても業務を担当しています。

彼が現地で培ったシェフたちとの深いつながり、友情がなければ、こんなスーパーチームが来日し、一緒にキッチンに立つ光景は見ることはできなかったと思います。

そして私もマコト君のおかげで、彼らと同じ空間に身を置き彼らのお料理をいらした皆さんへ紹介するという素晴らしい時間を過ごすことができました。

ちょうど20年前の2003年のあの日。たぶん今日みたいに寒い日だったと記憶しています。
何も知らずに思い切ってスペインに行った日が私の人生を変え、素晴らしい人たちと出会うことにつながり、そして今ここで、グランジャポンさんのコラムに掲載していただける文章を書いていることをとても不思議に、嬉しく、大切に思います。

それでは本日はこれまで。また次回、よろしくお願いします!

永田枝理子

永田枝理子

2003年に北スペインの古都ブルゴスを訪れて以来北部の文化、食に魅了され、現地で食べたものや見てきたものをシェアするべくブログ「GreenSpainPlus」を始める。12年間スペインワイン販売に携わり、現在は北スペイン料理研究家としておうちで簡単に楽しめるお料理を発信中。スペイン語講師としても200名以上に教えた経験を持つ。

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