増渕友子「カタルーニャのこと色々」
Pastis de poma アップルパイ
食欲の秋の到来ですね。秋になると食べたくなるものは何ですか?皆さんそれぞれにあると思います。
カサマイヤでは、紅玉リンゴが出始めると、毎年恒例のアップルパイがデザートメニューに加わります。
注文を受けてから焼き始め、焼き立てをお出しするため、所要時間は50分。
「50分もかかるんですか?」と驚かれることもあり、だったら尚更食べてみたい!と即ご注文される方も。
このアップルパイは私がカタルーニャ時代からずっと作り続けているデザートです。
アップルパイはカタルーニャ語ではPastis de poma パスティス・ダ・ポーマ(Pastis=パイ、ケーキなど。poma=リンゴ)。
私が働いていたカタルーニャのレストランEls Casals エルスカサルスの定番デザートの1つであったこのアップルパイは、薄く伸ばしたパイ生地の上に生のリンゴをたっぷりのせて焼き上げるスタイルです。
「パイ」部分よりも「アップル」の分量がかなり多いので、結構大きくてもペロリと食べられます。
このアップルパイはとても人気があり、作っても作ってもすぐになくなってしまい、私はいつもアップルパイの仕込みに追われていました。
営業時は、焼き時間がかかるため、オーダーを聞き逃したりオーブンに入れ忘れたりすると一大事。
サービスマンが読み上げるオーダーを私はいつも必死に聞いていました。
“Tomoko,una poma!”トモコー、ウナ ポーマ!(アップルパイ1つ!)”Vale!” バレ!(了解!)
こんなやり取りの後、すぐさまオーブンに投入。焼きたてにアプリコットジャムを塗り、バニラのジェラートをのせて完成、テーブルへ運ばれて行きました。
焼きたてのアップルパイは皆を笑顔にします。カタルーニャ人も大好きなデザートです。
カタルーニャ時代も、今ここカサマイヤでも、ずっと同じなのもどうかと思い、違うスタイルに変えてみたこともあるのですが、私にとってはやっぱりいつものこのアップルパイに勝るものはなく、結局元に戻してしまいました。もう変えません(笑)。
今年もまもなく始まります。カサマイヤのアップルパイ、ぜひ一度ご賞味ください。