金子シュウイチ「no spanish wine no life」
地中海の楽園アイランドワイン~マヨルカ編~

都内でスペイン料理店を展開するSoLグループ株式会社ソルインターナショナルの統括マネージャー/統括ソムリエ。イベント企画やセミナー講師などを通じ、スペインワインの普及に尽力。スペインのクラフトワインとスポーツを愛してやまない。
こんにちは。マリスケリアソルの金子です。
以前にスペインのアイランドワイン。カナリア諸島について記事を書かせて頂きましたが、先日、素晴らしいアイランドワインに出会いましたので今回はその土地のお話を少しだけしようと思います。
とっても魅力的なワインはスペインのバレアレス諸島にある『マヨルカ島』のワインでした。
赤ワインでも酸や糖の成熟と比例してフェノール類が熟しすぎないのが特徴です。アルコールは高くても13.5℃ぐらいで、冷涼感と島特融の塩味があって少しひんやりと飲めば、蒸し暑いこの時期でもぴったりだと思いました。
昨今このマジョルカ島も素晴らしい生産者が増え進化を続けているのです。

さてマジョルカ島ですが、場所はバレンシアから東に地中海に位置するバレアレス諸島にある最大の島です。バレアレス諸島は2つの群島と多くの小島と岩礁によって成り立っている自治州です。州都はマヨルカ島のパルマ・デ・マヨルカです。
クレーコートのキング、テニス選手のラファエル・ナダル選手がこのマヨルカ島生まれで有名ですね。
島の西には世界最高の音楽イベントで有名なイビザ島があります。東側には、18世紀半ばにフランスのリシュリュー公爵が、マオンという港町で『オリーブオイルと、卵黄とレモン汁』を混ぜたソースがお肉にぴったりだったといいうことでパリに持ち帰り有名になったマヨネーズの発祥の地メノルカ島があります。
地中海に浮かぶこの島は、年間 300日以上の晴天に恵まれる。『地中海の楽園』と呼ばれ夏は30℃、冬は10℃と、年間を通して寒暖差が少なく、とても過ごしやすく、典型的な地中海性気候の影響もあり、オリーブや葡萄、オレンジ、アーモンド、イナゴ豆の栽培などが盛んです。日本の沖縄をイメージすると良いと思います。
ぶどう栽培は島全体で行われていますが、主に畑が集中しているのはのが北西部と東部で、2つのDOがあります。
一つ目は
D.O. Binissalem(ビニッサレム)
島の北西部に位置し、海抜70m〜400m。
土壌は石灰質と粘土質に砂利と丸石が多く混ざる土壌が多い。
主要品種は
赤ブドウ品種は、Mant negro(マント・ネグロ)、Callet(カイエット)、Tempranillo(テンプラニージョ)、Monastrell(モナストレル)、Cabernet Sauvignon(カベルネ・ソーヴィニヨン)、Merlot(メルロー)、Syrah(シラー)、Gorgollassa(ゴルゴリャッサ)です。
白ワインの品種は、Moll(モル)またはPrensal Blanc(プレンサル・ブラン)、Parellada(パレリャーダ)、Macabeo(マカベオ)、Moscatel de Alejandría(モスカテル・デ・アレハンドリア)、Moscatel de Grano Menudo(モスカテル・デ・グラノ・メヌード)、Chardonnay(シャルドネ)、Giró Ros(ジロ・ロス)です。
D.O. Binissaleでは赤ワインはマント・ネグロを最低50%使用しなければならない規定があります。
DO Pla i Llevant(プラ・イ・ジェバント)
島の東部に位置し海抜は100m未満。
石灰を僅かに含む粘土質土壌。
主要品種は
赤ブドウ品種は
Mant negro(マント・ネグロ)、Callet(カイエット)、Fogoneu(フォゴネウ)、Tempranillo(テンプラニージョ)、Monastrell(モナストレル)、Cabernet Sauvignon(カベルネ・ソーヴィニヨン)、Merlot(メルロー)、Syrah(シラー)、Gorgollassa(ゴルゴリャッサ)です。
白ブドウ品種は
Prensal Blanc(プレンサル・ブラン)、Giró Ros(ジロ・ロス)、Parellada(パレリャーダ)、Macabeo(マカベオ)、Moscatel de Alejandría(モスカテル・デ・アレハンドリア)、Moscatel de Grano Menudo(モスカテル・デ・グラノ・メヌード)、Chardonnay(シャルドネ)、Riesling(リースリング)、Viognier(ヴィオニエ)です。
マヨルカ島のワインには大きく二つの特徴があります。
一つは島特有の固有品種ともう一つはEmbat(エンバット)と呼ばれるマヨルカ島特有の気象現象です。
Embatは主に昼間に発生し、通常、午前中に始まり、午後に最も強くなり、夕方には弱まります。海から陸に向かって吹く風で、主に南東から北西の方向に吹くことが多いです。
つまり夏の高温を和らげ、涼しい海風を内陸に運びます。これにより、昼間の気温が下がり、過ごしやすい環境が保たれるそうです。
ブドウ栽培において、Embatは重要な役割を果たします。地中海性気候からの適度な湿度を保ち、ブドウの成熟を助けるとともに、病害虫の発生を抑える効果と葡萄に独特の複雑みをもたらします。更に沿岸部ならではの塩気が特有の複雑みをもたらしています。
Embatは、マヨルカ島の気候や農業、観光業において重要な要素であり、特にワイン生産においては、ブドウの品質を高めるために欠かせない存在です。以前のブログにも書いたカナリア諸島の貿易風(アリシオス)と同じ島特有の季節風が栽培に大きな影響をもたらしているのです。
さらに歴史を紐解いていくと、過去に様々な支配下にあり、多種多様な文化が入り進化を遂げてきた歴史がありました。
マヨルカ島のワインの歴史は非常に古く、その起源は古代に遡ります。
【古代から中世】
紀元前数世紀にフェニキア人がマヨルカ島にブドウ栽培を導入し、ローマ人がワイン生産を発展させました。ローマ時代には、マヨルカのワインは地中海全域に広まりました。
【中世から近代】
イスラム統治時代(902-1229): イスラム教徒の統治時代には、イスラム教の禁酒令によりワイン生産は縮小しましたが、完全には消滅しませんでした。
1229年にアラゴン王国による再征服が行われると、キリスト教の影響でワイン生産が再び盛んになりました。特に、修道院がワイン生産の中心となりました。
19世紀
19世紀後半にフィロキセラ(ブドウ根に寄生する害虫)がヨーロッパ全土に広がり、マヨルカのブドウ畑も大打撃を受けました。この時期、多くのブドウ畑が壊滅し、ワイン生産は大幅に減少しました。
20世紀
再興と近代化: 20世紀後半になると、フィロキセラに強い台木を使ったブドウ栽培が復活し、ワイン生産が再び活発化しました。特に1960年代から1980年代にかけて、品質向上と現代的な技術導入が進みました。
21世紀
品質重視と地元品種の再評価: 現在では、マヨルカ島のワイン生産は品質を重視し、国際品種を取り入れながら、土着品種の復活に力を入れ多くのワイナリーが伝統と革新を融合させたワイン作りに取り組み、4kilosなど国際的にも高い評価を得ています。

そして近年
マヨルカ島の生態系を守りながら、土着品種を用いテロワールを表現する若手醸造家の台頭により、マヨルカ島のワインは更なる進化を遂げてきました。
様々な文化を吸収し、その後壊滅的な状況から、少しずつ復興を遂げアイデンティティとオリジナリティーある真のマヨルカワインに辿り着いたと思いました。
ヨーロッパを代表するリゾートアイランドという事もあり、観光客などの地元消費が大半で地元で消費されてきましたが、近年少しずつ輸出も増えてきていますが、生産量は多くありません。日本にも貴重なマヨルカワインが輸入されています。当店でも取り揃えておりますのでおすすめご紹介いたします。
ぜひ今年の夏は地中海のような楽園を感じる海沿いで、ソブラサーダ片手にマヨルカワインで楽しんでみてはいかがですか?
魚介専門店六本木一丁目「マリスケリアソル(marisquería sol)」のご紹介

店舗情報 | |
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住所 | 〒106-0032 東京都港区六本木2-3-6セントラルクリブ六本木2-1F |
アクセス | 東京メトロ「六本木一丁目駅」3番出口より徒歩2分。東京メトロ「溜池山王駅」13番出口より徒歩6分。東京メトロ・都営大江戸線「六本木駅」6番出口より徒歩7分。「六本木一丁目駅」3番出口を出て、歩道橋で麻布通り・六本木通りを渡る。歩道橋を降りて、すぐ右手に現れる店舗へ。 |
URL | http://www.marisqueria-sol-roppongi.com/ |
都内でスペイン料理店を展開するSoLグループ株式会社ソルインターナショナルの統括マネージャー/統括ソムリエ。イベント企画やセミナー講師などを通じ、スペインワインの普及に尽力。スペインのクラフトワインとスポーツを愛してやまない。