金子シュウイチ「no spanish wine no life」
今、静かにアツい!-リオハ・オリエンタル Rioja Oriental
都内でスペイン料理店を展開するSoLグループ株式会社ソルインターナショナルの統括マネージャー/統括ソムリエ。イベント企画やセミナー講師などを通じ、スペインワインの普及に尽力。スペインのクラフトワインとスポーツを愛してやまない。
こんにちはマリスケリアソルの金子です。
2025年ももう僅かですね。今年一年ワインの好きの皆様はどんな素敵なワインライフを送られたのでしょう??
僕は先日とあるセミナーに参加させていただきまして、近年飛躍するリオハのある産地のお話を聞きまして、その後色々と自分なりにまとめたので折角なら文字にまとめようと思い、今回のコラムのテーマにしました。
スペインワインと聞くと真っ先に名前が出てくるのがリオハ(Rioja)だと思います。お客様からも『リオハのワインある?』と良く聞かれます。
ただ我々スペインワインに精通している人なら常識かもしれませんが、そもそもリオハってどんな産地か?あまり深く知らない方も多いのではないでしょうか?
【まずはリオハ全体のおさらい】
リオハは、スペインで初めて「DOCa(デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ)」の格付けを与えられた、国内きっての伝統産地です。正式なDOとしては1925年に認定され、その後DOCaへ昇格。現在はラ・リオハ州、バスクの一部(アラバ)、ナバラの一部までまたがる広い産地になっています。

産地は大きく3つのサブゾーンに分かれていて、
•リオハ・アルタ(Rioja Alta)
•リオハ・アラベサ(Rioja Alavesa)
•リオハ・オリエンタル(Rioja Oriental)
この3つで、約6万6千ヘクタール以上のブドウ畑が広がっています。
昔は「リオハ=テンプラニーリョ主体の赤、樽香しっかり」というイメージが強かったと思いますが、最近は白やロゼもレベルが上がってきていて、テロワールや品種の個性を前に出したワインも増加しています。勿論伝統的な最高峰のワインも健在です。
その中でも今、驚きの成長を遂げているのが東側の「リオハ・オリエンタルRioja Oriental」です。いや本当今までのリオハの印象がガラッと変わりました。個人的には思いっきりツボでした。
【リオハ・オリエンタルってどこ?】
リオハ・オリエンタルは、名前のとおり「リオハの東側」、エブロ川の下流〜ナバラ側にかけて広がるサブゾーン。昔は「リオハ・バハ(Rioja Baja=低地のリオハ)」と呼ばれていましたが、イメージを一新するため「リオハ・オリエンタル」に改名されました。
•ログローニョより東〜エブロ川沿いに広がるエリア
•ラ・リオハ州とナバラ州の両方にまたがる
•気候はリオハの中でもっとも“地中海的”
約2000年前のローマ時代の頃からブドウ栽培が行われてきた“古株”の産地です。ただ、長いあいだ「暑くて平坦で、アルコール高めのワインを生むエリア=ブレンド要員」という扱いをされてきたのも事実。そこに変化が起きたのが、ここ10〜20年ぐらいの話です。
【歴史をざっくり:ローマ時代〜ボルドーの影響、そしてDOCaへ】
〈ローマ時代からブドウはあった〉
エブロ川流域は、ローマ帝国の時代から穀物とワインの一大産地でした。リオハ・オリエンタルも例外ではなく、地中海性気候を活かしてブドウ栽培が行われ、ローマ人向けのワインの供給地だったと言われています。
〈中世〜近世:修道院&巡礼路がワイン文化を育てる〉
その後、中世になると修道院がブドウ畑を管理し、サンティアゴ巡礼路を通じてワイン文化が一気に広まります。リオハ全体としては、“地元で飲まれる素朴なワイン”から、一段上の存在へと成長していきます。
〈19世紀:ボルドー危機とリオハの飛躍〉
19世紀後半、フランス・ボルドーでフィロキセラの被害が出たことで、ボルドーの生産者がリオハに技術と資本を持ち込んだのは有名な話。樽熟成の技術、長期熟成型の赤ワインというスタイルが、この頃いっきに洗練されていきます。リオハ・オリエンタルは、その中でも「熟度の高いブドウを供給するエリア」として重宝され、テンプラニーリョ主体のワインに、ボディとアルコール感を与えるガルナッチャの産地として発展します。
〈20世紀〜現代:DOCaとサブゾーンの整備〉
1925年にリオハはスペイン初のDOとして認定され、その後DOCaへ昇格。サブゾーンとして、
•アルタ
•アラベサ
•バハ(後のオリエンタル)
という区分が徐々に定着していきます。
さて、ここからが“オリエンタル”の本題。
【「リオハ・バハ」から「リオハ・オリエンタル」へ、名前が変わった理由】
「Rioja Baja」という名前には、スペイン語で「低い」「下」といったニュアンスがあり、産地としても“格下感”が出てしまうのが悩みのタネでした。実際、長年ワインの世界では
・アルタ&アラベサ:エレガント、長熟
・バハ(オリエンタル):暑くてパワフル、量的な産地
みたいなイメージで語られることが多かったんですよね。そこで、近年のテロワール志向・品質志向の高まりを背景に、「バハ」からよりポジティブなイメージを持つ「オリエンタル(東のリオハ)」へと名称変更が行われました。
改名の背景には、
•山の斜面や高地の畑など、ポテンシャルの高い区画が再評価されてきた
•ガルナッチャや単一畑の個性を前面に出したワインが増えてきた
•“安ワインの産地”というイメージから脱却したい
といった、現場の造り手たちの思いも強くあります。
【気候とテロワール:地中海性気候+高地という二面性】
暖かく乾いた“地中海性”の風
リオハ・オリエンタルの大きな特徴は、リオハの中で最も地中海の影響が強いということ。
•暖かく乾いた風がエブロ川をさかのぼり
•夏はしっかり暑く、日照も豊富
•病害が少ないため、オーガニック栽培の比率がリオハの中で最も高いエリアとも言われています
このため、昔はアルコール高め・豊満系の赤ワインのイメージが強かったのですが、最近はこの“暑さ”を逆に活かしつつ、バランス良く仕上げる方向へシフトしています。
【土壌:沖積土+鉄分を含んだ粘土】
土壌はエブロ川由来の沖積土と、鉄分を含んだ粘土質・ローム質が中心。
保水力のある土壌と、強い日差しのおかげで、糖度の高いブドウがしっかりと育ちます。
キーワードは「標高」と「モンテ・イエルガ」
最近特に注目されているのが、イエルガ山(Monte Yerga)の斜面や、高原状の区画です。
•標高600m前後までブドウ畑が上がってきている
•昼夜の寒暖差が生まれ、酸をしっかりキープ
•暑さ由来の熟度と、高地由来のフレッシュさが両立できる
【主役はやっぱりガルナッチャ(Garnacha)】
リオハ全体で見ると、テンプラニーリョが赤ブドウの圧倒的主役ですが、リオハ・オリエンタルに関して言えば、ガルナッチャの存在感がかなり大きいです。
ガルナッチャの役割
•高いアルコール度
•豊かな果実味(熟した赤い果実、スパイス)
•丸みのあるタンニン
この“ふくよかさ”が、テンプラニーリョの骨格と合わさることで、バランスの取れたブレンドが生まれます。専門家の解説でも「リオハ・オリエンタルでは、ガルナッチャがテンプラニーリョにボディと果実味を与える重要な相棒」とされています。
【ガルナッチャ復権、アルバロ・パラシオスの帰還】
一時期はテンプラニーリョの人気に押されてガルナッチャの栽培面積は減少しましたが、近年は
•古木ガルナッチャの価値再評価
•単一品種ガルナッチャの増加
•標高の高い畑からの“冷涼ガルナッチャ”スタイル
などが注目されていて、特にリオハ・オリエンタルは、その“ガルナッチャ復権”の中心地のひとつになっています。
その立役者となった一人がアルバロ・パラシオスです。スペインでは伝説的な醸造家の一人です。簡単に説明するとリオハ・アルタに生まれて、ボルドーの名門【ペトリュス】でワインも学び、その後プリオラートに可能性を感じ1993年【レルミタ L’Ermita】というとんでもないワインを造り上げプリオラートを一躍世界の舞台に引き上げた立役者です。その後ビエルソでもメンシア種から世界に通じるエレガント赤ワインを手がけました。
そのアルバロ・パラシオスが地元リオハに戻り注目したのがリオハ・オリエンタルなのです。
・ガルナッチャの可能性
・単一畑主義
・温暖産地でもエレガントに仕上げる栽培
を徹底して、現代のエレガントリオハの潮流に大きな影響を与えました。
【昔のスタイルと今のトレンドの違い】
〈昔の“リオハ・バハっぽさ”〉
一昔前までのリオハ・バハ(当時の呼び名)のイメージといえば、
•とにかく暑い
•アルコール高め
•色も濃くてパワフル
•長期樽熟成のブレンド用ベース
という、“ボリューム担当”なポジションでした。
〈今の“リオハ・オリエンタルらしさ”〉
今注目されているのは、そこから一段階洗練されたスタイルです。
•標高の高い畑=酸を活かしたエレガント系ガルナッチャ
•抽出控えめ&フレンチオーク多用で、樽香より果実味重視
•区画ごとの違い(単一畑・村名)を前に出すテロワール志向
•オーガニック/ビオロジック栽培の増加
こうした流れは、リオハ全体の“モダン化”ともリンクしていて、白やロゼの品質向上、在来品種の見直し、サステナブルな栽培なども同時進行で進んでいます。
【表示ルールの変化:ゾーン表示「Rioja Oriental」の意味】
2017年前後から、リオハではラベル表示のルールが大きくアップデートされました。
その中でも重要なのが「Vino de Zona(ゾーン表示)」の制度です。
Vino de Zona(ゾーンワイン)
•ラベルに「Rioja Oriental」などゾーン名を表示できる
•その代わり、ブドウは100%そのゾーン産でなければならない
•醸造・熟成・瓶詰めも同じゾーン内のボデガで行う必要あり
つまり、「Rioja Oriental」と名乗っているワインは、“オリエンタルという土地の個性をちゃんと反映してますよ”というお墨付きでもあるわけです。
さらに、より細かいレベルで、
•Vino de Municipio(村名)
•Viñedo Singular(単一畑)
といった表示も可能になっており、リオハ・オリエンタルでも単一畑のガルナッチャや、特定の村名を名乗るワインが増えています。
さらに2025年のヴィンテージでは、リオハ・オリエンタルで収穫が8月から始まるほど早熟傾向で、収量は平年の半分近く、約3,000kg/haという試算も出ています。
品質的には評判が良く、特に白・ロゼは「とても良い」と評価されていますが、農家サイドにとっては「おいしいけど儲からない」という厳しい構図。産地全体としても、気候変動への対応、高付加価値化、余剰ブドウの整理(場合によっては抜根)など、構造的な課題に直面しています。
リオハ・オリエンタルは、暖かくて有機栽培もしやすい一方で、気候変動の影響をダイレクトに受けやすいエリアのため
•標高の高い畑へのシフト
•収量制限&品質重視
•単一畑やガルナッチャの個性を売りにしたプレミアム化
という、今のトレンドがすごく重要になってきているわけです。
【まとめ】
リオハ・オリエンタルは「暑さ」と「標高」の両方を武器にした新世代の産地
•昔からブドウを育ててきた、ローマ時代から続く歴史あるエリア
•かつては“リオハ・バハ”として「暑くてパワフルなブレンド要員」というイメージ
•今は「オリエンタル」に改名し、テロワール重視&ガルナッチャ復権で再評価の真っ最中
•地中海性気候+標高の高い畑=熟度とフレッシュさのバランスが魅力
•オーガニック栽培や単一畑表示など、モダンなトレンドの最前線
•一方で、農家の採算や気候変動など、リアルな課題も抱えている
年内最後のコラムだったのでがっつり長々書き込んでしまいましたが、ご拝読ありがとうございました。
今僕が注目する躍進するリオハ・オリエンタル。是非皆様も一本試して見てください。
魚介専門店六本木一丁目「マリスケリアソル(marisquería sol)」のご紹介

| 店舗情報 | |
|---|---|
| 住所 | 〒106-0032 東京都港区六本木2-3-6セントラルクリブ六本木2-1F |
| アクセス | 東京メトロ「六本木一丁目駅」3番出口より徒歩2分。東京メトロ「溜池山王駅」13番出口より徒歩6分。東京メトロ・都営大江戸線「六本木駅」6番出口より徒歩7分。「六本木一丁目駅」3番出口を出て、歩道橋で麻布通り・六本木通りを渡る。歩道橋を降りて、すぐ右手に現れる店舗へ。 |
| URL | http://www.marisqueria-sol-roppongi.com/ |
都内でスペイン料理店を展開するSoLグループ株式会社ソルインターナショナルの統括マネージャー/統括ソムリエ。イベント企画やセミナー講師などを通じ、スペインワインの普及に尽力。スペインのクラフトワインとスポーツを愛してやまない。
カテゴリ:金子シュウイチ
タグ:ワイン, スペインワイン, リオハ, リオハ・オリエンタル
























