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Something Special ~おいしいのその先に~

岩瀬大二「酒で旅するスペイン」
おうちハロウィン、遊び心のあるワインで

おうちハロウィン、遊び心のあるワインで
岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

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日本でもすっかりファミリーイベントとして定着したハロウィン。一昨年から街で集まって騒ぐというよろしくないイメージも一山超えて、またこの環境下で街イベントではなくファミリーや親しい人だけで楽しむという方も増えているようです。

では、その際に楽しめるお酒…ということで…あった、あった、このワイン。「シャープ・ゾンビ」。スペインはリオハのワイン。いつからそうなったのかはわかりませんが、ハロウィンと言えばゾンビメイクが定番。実はゾンビ映画、リヴィング・デッドモノが大好きな僕としては、若干「こわないんかい!」とおいでやす小田風のツッコミもありますが、まあ、楽しみ方はそれぞれ。ですし、せっかくならのっかっちゃおうかな、というところで。

それにしても、いかにもなデザインですよね。ゾンビ映画では定番の立ち入り禁止、緊急事態発生的な黒と黄色の地に、あぁ、きたぞーゾンビがという絵。これ、1本でもなかなかですが画像のようにこうやって並べると…逃げられないなぁ。ちなみにこちらのデザイン、スペイン在住の日本人デザイナーの方が手掛けられたとのこと(デザインに関しては、以下の動画をご覧ください!「ゾンビワインのラベルの裏側のストーリー デザイナー篠原勇治さん編」)。

それにしてもなんでまたゾンビなのか。由来は「フルーティーでスムーズ、大変飲みやすいため、思わずスイスイ飲んでしまい、気づいたらゾンビのようになっている危険な赤ワイン」、そして、「また飲みたい気持ちが蘇るワイン」と言う意味も込めているんだそうです。

そういうノリから生まれたワイン。なるほど実はこの画像真ん中の女性が日本向けのセールスの担当者。数年前に来日されていた際、当コラムでもおなじみの「マリスケリアソル」さんでの一コマ。この時も「シャープ・ゾンビ」を結構飲んだ後だったかと記憶してますが、ワインの狙いどおり、その記憶はあやふやだったり…(周りの人たち、3人とも当コラムの執筆者でございます)。

どうしてそんなに気分が良くなるかと言えば、そしてまた飲みたくなるかといえば、それはちゃんとしたワインが故。産地であるリオハは「言わずと知れた」と言っていいレベルのスペインワインの聖地。伝統的な王道の地であり、世界に冠たる高品質ワインを数多く生み出し、さらに最近では新しい感性を持った若い醸造家たちが新しいリオハを生み出す、そんなお土地柄。ここで造られているワイン、ということはちゃんとスペインワインとしての良さを持っているということ。良い畑から生まれた良いぶどう、これをしっかり品質を守りながら造りあげる。基本がしっかりしているからこそ、この遊び心はテキトーなものではなく、本気。真剣に遊ぶ、というやつでしょうか。

さて、テイストは? スペインワインを古くから知る方の中では「リオハって重いよね」というイメージもあるかもしれませんが、こちらは、とってもいい意味でカジュアル。名前はゾンビでも、フレッシュで、それでもぶどうやワインメイキングに関してはリオハらしさがあって、これが面白い。いきなり渋みや重みを香りや口に感じることはなく、スムーズで柔らか。みずみずしさも感じられます。飲んでいくと確実に赤ワインとしての手ごたえがあり、それでもすっとキレよく飲み進められる。心地よい清涼感のある苦みも飽きさせない。
ところが…明るい赤い小粒の快活な果実感から、熟した黒い大粒のベリーや葉巻的な湿った大人な雰囲気が少しずつ、ほどよい渋みと重みとともにじわじわと広がり、確かに気がついたら、もう、どうでも良くなっちゃう。だいたい自分のテイスティングメモもこのあたりで、自分の字でも読めない字になって、その先、ばったりとメモが止まっていたりします。

その原因はワインそのものもそうですが、実にフードフレンドリーだということ。クラッカーにフムスやオリーブ、ポテトサラダなどをシンプルに持ったアミューズから、ソーセージと豆の軽くトマトソースや生ハムスープで煮たもの、カラマリやナス、カボチャのフリットあたりも油をすっと流して素材の余韻を楽しませてくれるし、もっと言えばソーセージをボイルしたものにちょっと黒コショウを振った、そんなシンプルなアテでも存分に楽しいんです。スペインバル定番のフレンチフライに目玉焼きを載せたタパス、ハラミステーキ、チーズは塩気のあるハード、セミハードタイプで、ワインにハーブやスパイス感を感じ始めたらラム串も面白い…とどんどんお腹がすいてきます。あ、甘味よりも華やかな酸味を楽しめるタブレットのチョコレートも…。
フードフレンドリーなワインの良さは、子供たちがいて一緒の食べ物を楽しんだり、親しい人の持ち寄りで色々なものが集まる際に、これ出しておけば大丈夫、というゆったりした気持ちになれること。ワイングラスもステム(脚)付きのものではなくてOK。おススメは最初はぐっと冷やして、後はテーブルに置いて少しずつ温度をあげて。ただ冷えたまま1本すぐあいちゃうかも…。デザインも秀逸なので何本か並べるのも楽しいでしょう。

ゾンビメイクをしなくても、ゆるやかーにゾンビになれそうなワイン。嚙みつくのは料理だけでお願いします。

岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

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