岩瀬大二「酒で旅するスペイン」
生ハム×ワイン。スペインの幸せ
酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。
スペインの食文化を代表するひとつ “生ハム”。もうシンプルに幸せな食ですが、酒好きとしてはここにうまい酒が加わることで1+1が2じゃなくて、何杯にも…あ、何倍にもなってしまう。もちろん味わいの相性というのもあるのですが、生ハムとは何か?その食文化の歴史とは?といったことから、生ハムのカッティングの技術でも味わいが驚くほど変わるとか、そういった背景や物語を聞けば、それもまた世界が広がり、深まっていく楽しさがあります。
具体的なペアリングのいくつかについては後述しますが、僕自身がそれに気づかされたきっかけは、数年前、あるイベントでスペイン政府観光局のPRステージプログラムを担った際、一般社団法人日本生ハム協会さんに登壇いただいたときのこと。
「正しい生ハムの知識普及」を目的として2015年に設立され、知識と技術を有する「生ハムエキスパート認定試験」の運営も行う協会ですが、この時のお話の内容が素晴らしいものでした。
そもそもスペインやイタリアなど南西ヨーロッパにおける生ハムの定義は「豚の腿肉を塩漬けし、加熱せず長期熟成したハム」なのですが、考えてみればそんな定義も知らず。牛や鳥、塩以外の調味料やスパイスの使用は、厳密にいえば生ハムの定義から外れるのか、そんなシンプルな驚きから始まったお話。ではなぜこんなに味わいが変わるのか? 奥深い味わいの違いが生まれるのか、さらに、歴史・文化・社会的背景(カソリックの多いエリアでは生ハムとワイン、プロテスタントでは加熱ハムとビールの組み合わせ……などなど)も知的な興奮を呼ぶものでした。
その後、代々木公園で行われる日本最大級のスペインイベントである「フィエスタ・デ・エスパーニャ」では、僕が実行委員長を務めていたタイミングでブース出店をいただき、またトーク&デモンストレーションを通じて多くの来場者に、魅力を語っていただいたのも素晴らしき体験でした。
こうしたリレーションの中、さらに生ハムの世界にさらに引き込まれるイベントに参加しました。協会が主催される第10回「生ハムの日」。11月11日が生ハムの日ということで、関係者や有資格者、イタリア、スペイン大使館からのゲストが一堂に集うというイベント。改めての生ハムの歴史や文化のセミナー、今年新たにエキスパートの資格を獲得したみなさんの叙任式や、技術を争うコンテストも開催。
プロフェッショナルのみなさんがカットした生ハムを堪能できるということもあり会場は大盛況でした。ワイン、シェリー、スペインビールも数多く並び、最上質のものから国内のものまで多彩な生ハムとのペアリングも存分に楽しめ、新たな発見もありました。
例えば生ハムといえば赤ワイン、というイメージもありますね。もちろんこれも正解です。でもそれだけではもったいない。例えば淡い味わいであったり、濃厚な赤身でも脂身の部分などは熟成タイプやうまみ感のある白ワインも見事にあいます。とろける脂と白ワインが溶け合うとテクスチャーもちょうどよく、生ハムの優しく熟成した塩味と絡み合う。これがたまりません。その塩味とシェリーとの相性も抜群。おすすめはマンサニージャのようなやや軽めのタイプ。また熟成が進んだアモンティリャードは赤身、さらに濃厚なオロロソはさらに熟成感のある部位とあわせると至福の時間。カシューナッツやクルミ、アーモンドなどとともにあわせるとさらに深い愉しみが。
加えて試していただきたいのは(この日のプレゼンテーションにはなかったけれど)スペインの最高級ともいえる生ハムと日本酒のペアリング。特に純米吟醸系。華やかさ、味わい、うまみ、よくほどけた塩味と日本酒の甘味。これらが脂ときれいな水とともに溶けあえば……。
生ハムとワインやお酒の奥深く楽しい世界。バルで、おうちで。是非ご体感ください。
生ハムの世界。情報はこちらの公式サイトで>>
(一社)日本生ハム協会は、生ハム(イタリアやスペインの長期熟成ハム)の正しい知識と取扱方法の啓蒙活動をしています。 | (一社)日本生ハム協会
https://jcha-ham.com/
酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。