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Something Special ~おいしいのその先に~

岩瀬大二「酒で旅するスペイン」
苦悩の年を乗り越え、スペインの祝祭が代々木公園に帰ってきます

苦悩の年を乗り越え、スペインの祝祭が代々木公園に帰ってきます
岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

  • daiji iwase+W

11⽉26⽇(⼟)・27⽇(⽇)、代々⽊公園がスペイン⼀⾊に染まる!ということで、⽇本最⼤級のスペインフェスティバル『フィエスタ・デ・エスパーニャ』(以下フィエスタ)が代々木公園に帰ってきます。
⽇本スペイン交流400周年にあたる2013年に初開催し、毎回10万⼈以上が来場するイベントで、2020年まで8回開催してきましたが、2021年は新型コロナウィルスの影響もあり中止。今年は10年目で9回目の開催となります。

開催にこぎつけたとはいえ2020年は、今までと同じとはいえないフィエスタでした。いわゆる第三波をにらみながら、ギリギリまで中止か開催かの決断に揺れ動きました。実は筆者・岩瀬、この年の初頭からフィエスタの実行委員長となったのですが、まさか、このような事態に直面するとは…。実行委員長といってもスタッフの皆さんはしっかり固まっていたので、広報部長的役割で、当日は情報番組の取材に「こちらが今話題のバスクチーズケーキですよ~」と笑顔で対応すればよいかぐらいの気持ち。また、このチャンスにスペインワインの多様性を紹介できるようなブースを自らだそう!と前向きな気持ちで取り組もうと考えていたのですが……

開催日2週間ぐらい前から、中止を表明するイベントが相次ぎ、感染対策への取り組みや、なぜこの時期にイベントをやるのか? といった取材が増えてきました。そして迎えた当日、NHKと民放、関東のキー局、その報道番組のほとんどが取材に訪れ、実行委員長としての役割は「報道される」ことに。幸いにもこのとき取材側の方々は好意的なスタンスで、こわごわ見た番組の編集も「こういう考えで、こういう対策をして実施されている」「ステージも飲食店も機会が奪われている今、締めつけるだけでよいのか?」という方向性。自分のSNSをクローズしておこうか、など大いに悩みながら、多くの批判を覚悟していたのですが、むしろイベントのよいPRになったのかなと、今、振り返ればですが、安堵はしています。

この時は、公園のフリーイベントと言う意義からすればこれも苦渋ではあったのですが、入場制限、また入場料をいただき、その費用をフェンス設置、消毒ゲートの設置、そのほか感染対策に使いました。長らく入場を待たされた方もいらっしゃり、決して完ぺきとは言えない運営ではありましたが、このイベントは運営が作って提供するものではなく、来場されたみなさん、出店者、出演者、ボランティアスタッフ、かかわる人たち全員でつくるもの、という思いで、ご協力をいただきました。MC陣も本来盛り上がるべき仕事なのに、お静かにお願いしますと何度も声をかけるのはつらいものでしたが、多くの来場者の方が理解くださり……思い出すと、泣けますね。

そのよき伝統を守ろう、無事に開催してきたこれまでの歩みを続けていこうという前向きな気持ちで2021年は中止を決断。この先も不透明な状況は続くようですが、この2年の経験を得て、2022年の開催を決定しました。フルスペックとはいかない状況ではありますが、11月の代々木公園の週末を変えてから10年目、9回目のフィエスタ。情熱のステージに息をのみ、楽しい演奏を美味、美酒とともにゆっくり味わう。晩秋から冬へと向かう代々木公園で、スペインの祝祭の週末を存分に。苦しい状況をみなさんとともに乗り切ったからこそ、見える景色、幸せがそこにあるはずです。

長い長い前置きでした。
そろそろ実行委員長、楽しい話を書かなくては!

まずグランジャポンのコラムですから、美酒、美食。会場内にはスペイン料理店やフードトラックが⼤集結。定番のパエリア、熱々のアヒージョをはじめ、多種多様なスペイン料理が楽しめます。パエリアのハイライトは当コラムでも執筆している虎ノ門「エル・トラゴン」栗原シェフのチームによる恒例の『大鍋パエリア』。美味しい!はもちろん作る過程もエンタテインメントです。パエリアで注目は春、日比谷公園で行われた「パエリア・タパス選手権」で話題を集めたビーガン向けの野菜だけを使ったパエリアが初出店。スイーツ系では昨年人気で最終日の早い段階で完売となった、当コラムでレシピを紹介している加瀬まなみさんのバスクチーズケーキもお楽しみです。

お酒も戻ってきます。今年の目玉はなんといってもスペイン4大ビールブランド、奇跡のそろい踏み。「イネディット」「エストレージャガリシア」「クルスカンポ」「マオウ」が代々⽊公園に集結!詳しくはビールおじさんことヒラマツカズヒロ氏のコラムで紹介しているので要チェック!ワインは4社が出店。ナチュール系から王道、各地の多彩なテロワールの表現まで、かなりのアイテムが並ぶ予定です。まさにスペインワインのショーケース。初出店ではスペイン産のジン。ベルモットをはじめいわゆるハードリカーやリキュールも人気のスペイン。楽しみなアイテムです。そして恒例のシェリーブースももちろん帰ってきます。べネンシアのパフォーマンスはやはり欠かせない風景ですね。

フィエスタの美酒美食と両輪なのがステージプログラム。詳細なタイムテーブルは直前の発表となりますが、今回も充実の内容。メインステージのオープニングは、両日、プロバスケットボールチーム「アルバルク東京」のチアリーダーとマスコットキャラクター・ルークが登場し盛り上げてくれます。実はスペインはバスケ大国。世界でもトップクラスの強豪。アルバルクにはスペイン代表の選手も所属しているという縁もあり登場いただきました。サッカー、パデルに続いてスペインバスケの熱気もお届けします。メインステージと言えばやはりフラメンコ。連日、学生フラメンコ協会時代からフィエスタと縁のあるOBたちが、メインステージとサブステージ両方で華やかに踊ってくれます。日曜日のラストを飾るのは、受賞歴を誇るメンバーたちの迫力のステージ。晩秋の西日の中、感動的な時間となることでしょう。初のステージ登場となるのは土曜日のラスト、スペインの歌劇サルスエラ。どんな出演者がどのようなステージを展開するのか、楽しみです。もちろんフィエスタファンにはおなじみの陽気な3人組ユニット「トゥナ・デ・ハポン」のスペインポップクラシックの名曲の数々(両日)、べネンシアドール×フラメンコ(土曜日)もスタンバイ。こちらのメインステージの進行は一昨年同様、ビールおじさんヒラマツカズヒロ氏とマリーサの2人。応援してあげてくださいね。

来場者のみなさんには、引き続きお願い事も多くなりますが、ともにこの場を盛り上げ、守っていけますように。昨年この場に集えなかった分、今年は今の状況だからこその盛り上がりがあって、そして最後に喜びを分かち合えますように。みなさん全員で、代々木公園を、美しく幸せなスペインの祝祭の場にしていきたいと思います。今年は「これが話題のバスクチーズケーキです」とちょっと軽めに役割が出来たらいいな、と思いつつ、細心の準備をしてお待ちしています。

(画像:(C)FDE実行委員会)

岩瀬大二

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酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

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