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Something Special ~おいしいのその先に~

岩瀬大二「酒で旅するスペイン」
パエリア&タパスの祝祭。技を味わい、物語も楽しむ

パエリア&タパスの祝祭。技を味わい、物語も楽しむ
岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

  • daiji iwase+W

4月15日(金)~17日(日)の3日間、東京・日比谷公園にて、「パエリア・タパス祭り2022」が開催されます。

私がこのイベントにかかわったのは8年前。
記念すべき第1回の開催である2014年7月、豊洲。全国のパエリア職人、名店が、本場バレンシアで開催される「国際パエリアコンクール」への出場権をかけて集結。職人たちの真剣な姿を見ながら、スペインの食、酒、音楽、舞踊を楽しむという、スペイン関連イベントとしては画期的なものでした。このイベントを企画し、やりきった主催者・栗原靖武さんの情熱と行動力、忍耐と根気。栗原さん自身、国際パエリアコンクールに乗り込んだ経験があり、そこで得たことを全国でパエリアを手掛ける人たちとともに広げていこうという志がありました。志に賛同しともに取り組んだ、栗原さんの店のスタッフ、ボランティア、日本パエリア協会や協賛企業の尽力も成功の裏側にありました。縁あってお声がけいただき、ステージMCを担当しましたが、こうした思い、そして参加者の真剣な取り組みを、楽しい祝祭日のようなイベントではありますが、その中でどう言葉、声に乗せて伝えられるか。魂や志が裏側にあってこその楽しいイベント。今もあの時の緊張感を思い出すことがあります。

▲第1回イベントの巨大パエリア

翌年も豊洲で開催。さらに規模は拡大され、パエリア選手権に加え、日本各地の地域の素材を使った全国ご当地パエリア大会も開催。テレビの情報番組でも取り上げられ大盛況。以降、会場を代々木公園、日比谷公園と移し、パエリア同様、スペインで行われるタパス選手権への出場権をかけたコンテストも開催。現在は開催期間にのべ10万人が来場する国内最大級のパエリアイベントに成長しています。

8年かかわってきて、パエリアを通じて、いろいろなことに気づかされました。まず、あらためてパエリアというものがスペインの文化から生まれたものであること。大会の規定パエリアはバレンシアーナ。鶏とウサギ、モロッコインゲン、ガラフォン豆、トマトといった山の素材(詳しくは栗原さんのコラムにて)。日本でパエリアと言えば贅沢な海鮮、鮮烈なイエローの色合いというイメージがありましたが、源流はここにあり、各地に多彩なバリエーションがあること。源流の理由。米はこの地が宝庫であり、薪で、休日で、男たちが…。パエリアを通して地勢と文化を知る。酒ライターとして日本で、世界で体感しているテロワールを、パエリアを通じても感じることができた。学ぶというのではなく自然に、美味しく、楽しみながら。

▲バレンシアーナに挑む職人たち。薪だけではない熱気

また、同じ釜の飯を食うというような日本の文化、幸せなコミュニケーションとも共通点があることにも気づかされました。立ち上げ当初の栗原さんの企画書には、コミュニケーション、食育、災害時というようなワードが記されていました。パエリア祭りでは大鍋で炊かれる巨大パエリアが名物です。もちろんイベントの盛り上げ、話題性という面もありますが、同時に日本におけるパエリアの新たな可能性と親和性も表しているものでもあります。

▲江東区長と陸前高田市長のトークセッションでは地域や災害とパエリアと言ったテーマで掘り下げも

もうひとつ、これだけの素晴らしいパエリア、タパス職人たちが全国各地にいること。過去の大会で集結したのは、東京はもちろん、関東、関西、東海、札幌、熊本、宮崎。課題のバレンシアーナで腕を競うことはもちろん、ご当地の素材を使った驚きの発想で生まれるパエリア、世界でも戦った経験を活かしたタパス、老舗の誇りや、若き感性、裏側に物語があふれた店。時には初チャレンジの大番狂わせに、シンデレラストーリー。参加をきっかけに人生も変わるというようなエピソードも綴られてきました。第1回、豊洲。優勝者の発表をしたのですが、3位、2位と読み上げ、そのたびに喜びの表情やくやしさの声が伝わり、事の重大さ、そうか、これで運命が変わるのか、という気づきからの緊張感。1位の発表の際には、声が震えていたようにも思います。このとき優勝したのが北海道・札幌からエントリーしていた「バル・エスパーニャ」。今やこのイベントに欠かせない存在となった店ですが、歓喜と感涙の檀上は、彼らにとっても僕らにとっても、そして栗原さんをはじめとするイベントを作り上げた人たちにとってもかけがえのないモーメントだったと思います。

▲真剣勝負にギャラリーも興奮気味

3月4日、このコラムが公開されているタイミングでは、詳細などは発表されてはいませんが、おそらく今回も熱く、楽しく、でもどこかのどかな、そんな3日間になるのではないかと思います。
私は今回もステージMCとして(このコラムでも記事を書いているビールおじさんことヒラマツカズヒロさんとともに)3日間会場にいます。ぜひお越しいただきお声がけください。一緒に、スペインの美酒で乾杯、サルーといきましょう。。そう、このイベント、来場者よりもステージMCが飲んで笑う。
出場者、主催者、スタッフの思いを感じて、一緒に熱く、より楽しく、でも、だからこそのどかな時間を堪能してください。

岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

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