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Something Special ~おいしいのその先に~

岩瀬大二「酒で旅するスペイン」
続・ほころぶ午後と幸せな夜に、はちみつワイン&はちみつを

続・ほころぶ午後と幸せな夜に、はちみつワイン&はちみつを
岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

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以前、“ほころぶ午後と幸せな夜に、はちみつワインを”というコラムで、ミード(はちみつワイン)について紹介しました。

あれから、少しずつではありますがミードの世界は世に出てきているようで、先日、日本経済新聞の土曜特別編集版『NIKKEIプラス1』にて、国産ミードのTOP10という記事が掲載されました。

蜂蜜酒「ミード」

 
専門家おすすめ、食事に合う国産10品 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD14BMD0U4A210C2000000/
※有料会員記事
約4000円以下、国内で造られ、比較的手軽にお取り寄せや購入ができ、日本のテーブルにあうものという条件のもと料理人、インポーター、蜂蜜の専門家、酒店など10名の専門家が審査をするというものでしたが、私もその一人としてリストアップと審査に加わりました。

そもそもミードって?というところですが、以前の記事を参照いただきつつ、かんたんに紹介すれば、「はちみつと水を原料に酵母で発酵させた醸造酒」のこと。

ぶどうに置き換えればワイン。軽やかで甘やかでやさしげで、というイメージが浮かびます。もちろんこれは正しいのですが、それはどちらかと言えば最近広まってきたミードの特徴。中世から親しんできて文化の一つともなっているポーランドをはじめとする東欧・中欧地域では、かなり強いアルコールで、風味豊かなウォッカという感じのものも多くあります。

以前、コラムで紹介したリオハのミード「Hidromiel de Baja Montaña 2019」と「Hidromiel de Baja Montaña Semidulce 2019」は前者。

近年の食志向のライト化、ヘルシー化、若い世代やライトにお酒を飲む層に向けた新しい価値という背景があります。さらに、食文化の多様性もやはり背景にあって、スペインでありながら「Hidromiel de Baja Montaña 2019」は日本の春野菜の天ぷら、きす、アナゴといった江戸前の天ぷら、わさびとの好相性、軽やかな気持ちでランチタイムを、また夕方キックオフの一杯としても楽しませてくれる感がありましたし、「Hidromiel de Baja Montaña Semidulce 2019」は白身魚やポークの西京漬け焼き、甘酸っぱさと辛みが調和したタイ料理、青パパイヤのサラダといったエキゾチックな料理もかなりいい感じで手を取り合うでしょう。

さて、日本で近年広がってきたミードということであれば、日常から多彩な料理が並ぶ日本のテーブルですから、より個性豊か、もしくはとても良いバランスでいろいろな食と寄り添うものという期待が高まります。加えて健康志向というキーワードも浮かんできます。

さて、実際に24のミードを味わってみて……。
審査そのものは大変ではありましたが、とても面白い機会で、なにより、国産のミードだけをとってもこれほどユニークで、多彩で、個性豊かな世界があるのかと感嘆しました。もちろん中には、まだまだかな、とか、個性が突出しすぎて……というものもありました。しかし、それもまた良きキャラクター。私を含む10人の審査員の票や講評を見ると、共通して素晴らしいという票を与えたものもあれば、好みや可能性などでかなり分かれたものもありました。

ざっと上位を見ると、1位には福島の日本酒蔵のバランスがよいミードが選ばれました。会津に自生するトチノキの花の蜜が原料。優しく上品な甘さが漂い、華やかさも十分。300年以上続く酒蔵が造っただけあって実に巧みに造られていました。アルコール度数は5%。日本酒蔵のミードでこの低アルコールで複雑さもあるというのはお見事。パンケーキやデザート、セミハードタイプのチーズといった、はちみつらしい取り合わせの食が浮かぶのも好感でした。

2位は、トチノキ、リンデンなどをブレンドし、繊細な味わいと綺麗な仕上がり。はちみつの加工食品を販売する千葉の工房の作品です。はちみつの専業ということではちみつの扱いにはやはり長けているのでしょう。フレッシュ、繊細さの中にもちゃんとクリーミーな濃厚さがあって、グラタンやカニクリームコロッケといった乳製品を使ったふだんの洋食が似合う。

3位は戦前から続く養蜂場の「はちみつが主役」と感じられるミード。菩提樹のはちみつに健康食にも使われる花粉を加え、あえてろ過せずに沈殿する花粉の香りまで味わってもらおうという趣向。はちみつ本来の、と書くと、甘い、と感じるかもしれませんが、むしろはちみつ由来のクリーンな酸味を存分に味わえます。それは、かぼすやライムサワーのようでもあり、不思議と焼き魚や家庭で楽しむ和食に新しい価値を与えそうです。奇しくも、酒造、工房、養蜂と3つの造り手さんの1,2,3。これもなんだか興味深い。

以下、インドのスパイスを加えたり、ジンのような複雑なボダニカル、濃厚なはちみつそのものを飲むようなもの、ジャスミンティーを想起させるものや、キレよく炭酸でわってビール的に楽しめるもの、熟成感が強く度数も高いものなど、はちみつのお酒といってもその幅は広く、造り手さんの狙いもなかなか面白い。

以前のコラムで、「ふんわりとテーブルに健やかな蜂蜜の香りを感じながらの午後、夜。ハチミツ紅茶や、蜂蜜を使ったクッキーや料理などとともに並べれば、大人たちだけではなく、キッズたちも一緒に。最後にあと1杯なら、クラッシュアイスとソーダ、ちょっとだけミントを加えたカクテルでよりライトに、もおススメです」と、シーンに合わせて、という提案を記しましたが、今回、多彩なミードを試して、シーンも多彩であることを実感。休日の朝の健康的な1杯とリゾートのような朝食、いつもの昼に、夜の始まりと、おやすみなさいと、日常と非日常。料理も和、洋、中、揚げ物、乳製品系、肉、魚介、エスニック、甘味と自由。

という中で、ミードを通して、あらためてはちみつの楽しさにも気づかされました。蜂蜜、それ自体であれば、より素材の風味、個性も感じられるでしょう。素材の違い、場所・風土、造り手の想いなど、よりダイレクトに個性と、そこからのシーンのイメージが湧くのではないでしょうか。そのものを味わう、料理に使う、いろいろな飲み方もある。そこから日常のお気に入りのはちみつ、特別な日や人とのはちみつと出会う。

ミードには、お酒の楽しさとともに、はちみつ本来の面白さ、そして自分のくらしをふりかえるような面白さもあります。機会がありましたらぜひぜひお試しください。

岩瀬大二

岩瀬大二

酒旅ライター、ワインナビゲーター、MC。専門誌、WEBマガジンをはじめ酒と旅をテーマとした執筆多数。ワイン学校「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本最大級のスペインフェス「フィエスタ・デ・エスパーニャ」2020年実行委員長。

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