野堀貴則「いつの季節もロゼワイン日和」
日本のワイン
「estación エスタシオン」オーナーシェフ。神楽坂の人気スパニッシュ「エルプルポ」を経て2015年にモダンスパニッシュとロゼワインをコンセプトに「エスタシオン」をOpen。数年前から年に一回、スペイン地方の郷土料理を学ぶ旅を続けている。特にガリシアが好き。ソムリエの資格も所持し、ワインにも精通。
こんにちは!
神楽坂エスタシオンの野堀です。
今回はスペインワインではなく、我らが故郷日本のワインについてお話ししたいと思います。
近年、日本ワインに注目が集まってるのを肌で感じて、飲む機会も増えたなと思ってる人は多いと思います。
毎年スペインを旅する時は必ずそのエリアのワイナリーを訪ねてきた僕ですが、それと同時に自身の産まれた国のワインにも興味を持つようになったのが13年くらい前でしょうか。
コロナ禍でスペインも遠くなり、国内のワイナリーをいろいろと巡り造り手の人達との交流の機会も多くなりました。
日本は北から南まで現在約470のワイナリーがあります。
そんな日本ワインの歴史と産地を少し紹介していきます。
歴史
明治初期1874年、僧職の家系に生まれた山田宥教と商人である詫間憲久が山梨県甲府市で本格的なワイン造りに着手します。
明治政府の殖産興業政策の一貫として、他にも北海道、山形県、茨城県、神奈川県などでワインの試験醸造が始まり、1877年には山梨県甲州市の勝沼で初めての民間ワイナリーである「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されます。
1890年には「日本ワインの父」と呼ばれている川上善兵衛が「岩の原葡萄園」(新潟県)を設立。
私財を投げ売って1927年にマスカットベリーAやブラッククイーンなど日本独自の改良品種を開発し、1940年には22品種の優良品種を発表しました。
しかし、当時は醸造技術がまだなく良質なワインを造ることができなかったことや、当時の日本食との相性が悪かったことから、国内のワインの売れ行きはイマイチでした。
そんな中、ワインの先駆者たちは、日本人向けに人工甘味を添加した葡萄酒を生み出し大ヒットします。
醸造された葡萄酒やブドウ果汁に砂糖や酒精、香料などを添加した日本独自の甘味ワインは多くの日本人に受け。サントリーの創業者である鳥井信治郎が1907年に生み出した「赤玉ポートワイン」は一世を風靡しました。
1960年代から80年代になると高度成長のためにワインの生産量と消費量が増加し始めます。大阪万博の影響もありワイン消費量が前年比162%となった1973年は「ワイン元年」と言われています。
1980年代には大手ワイナリーを中心に、それまでは栽培が難しいとされていたヴィティス・ヴィニフェラ種(シャルドネ、ピノ・ノワールなどの欧米・中東品種)の本格的な栽培がスタート。この影響により、1990年代初期のバブル崩壊後に本格的ワインが普及するようになります。
日本人の食事が欧米化したことで、ワインとのペアリングに違和感がなくなったこともありワイン消費量や生産量の拡大に拍車をかけていきます。
と、この様な歴史はソムリエ教本に載っているので更に細かい内容が気になるかたは是非みてみてください。
さて、なんで今回日本ワインかと言いますと、エスタシオンやオリでも日本ワインを積極的に使う事が多くなり、それと同時に造り手に実際会ってその想いも伝えたい!って思うようになります。
日本の食材を使う料理人として、日本のワイン産地にも興味が沸くのは必然でした。
北海道、長野、富山、山梨、九州と各地のワイナリーに行くようになります。
小さいクラフトワイナリーも沢山増えてきたのもこの近年ですね。
スペイン品種の葡萄も沢山植えらていているのも知ってましたか?
ざっくり産地と品種を紹介します。
「北海道」
北は名寄から岩見沢、余市、函館とドイツ系の品種やピノノワール、小公子など、ヨーロッパの品種が多く、冷涼な産地として1番注目されています。
「東北」
山形、宮城は日本固有のマスカットベリーAやナイアガラ、デラウェア、コンコードなどの食用系葡萄から、メルロー。
新潟はガリシアに似た砂土壌から育てられるアルバリーニョからとても素晴らしいワインが作られてます。
「山梨」
甲府、勝沼、塩山エリアは甲州やマスカットベリーA、北斗はシャルドネ、カベルネ、ピノノワールなどの国際品種。
「長野」
北から南までメルロー、シャルドネ、など国際品種が多く栽培されています。
標高が高いのも長野の産地の特徴。
「中国地方」
岡山、島根はさまざまな葡萄が植えられ、これから注目の産地です。
まだこのエリアは行けてないので訪問したい。。
「九州」
台風の通り道でもある九州は宮崎や熊本、大分にワイナリーが集中しています。
日本でも温暖で、早熟の品種が多く、宮崎ではテンプラニージョも栽培されています。
日本も北から南まで気候に合った品種が経験と共に理解されどんどん美味しいワインが造られていくでしょう。
僕がイチバン日本の品種で好きなのは「甲州」です。
山梨で育てられる甲州のワインは、スッキリと凛とした酸に、フレッシュで瑞々しい果実が素晴らしい品種。日本の野菜やお魚には本当に合うと思います。
勝沼にあるワイナリー「勝沼醸造」や塩山の「98ワインズ」さんは個人的に仲良くしてもらっていて、東京からも近いので年に3.4回訪問しています。
今年は勝沼醸造で有賀さんとキュベエスタシオン造る予定です。
今まで国外のワインと比べると薄いとか甘いとの印象が強かった日本ワインですが、現状は全く違って日本のテロワールをしっかり感じれる、ピュアで綺麗で繊細なワインが全国で沢山造られています。
ほんと、日本のワインは素晴らしい。ワイン好きなら、一度日本のワインにしっかり向き合ってみてください。
そして、日本の食材と合わせて飲んでみて欲しい。素敵な体験ができると思います。
エスタシオンとオリでも日本各地のワインを沢山飲めます。
この機会にスペインワインと飲み比べてみるのもいいかもしれませんね。
「estación エスタシオン」オーナーシェフ。神楽坂の人気スパニッシュ「エルプルポ」を経て2015年にモダンスパニッシュとロゼワインをコンセプトに「エスタシオン」をOpen。数年前から年に一回、スペイン地方の郷土料理を学ぶ旅を続けている。特にガリシアが好き。ソムリエの資格も所持し、ワインにも精通。