髙橋綾乃「\もっと/チャコリを飲もうよ」
写ルンですに残した、2026年のバスク
Kaixo!(カイショー!:バスク語で「こんにちは」)
バスクワイン専門店「チャコリを飲もうよ」の店主であり、
「チャコリ伝道師」の髙橋綾乃です。
今年の6月、私は約1ヶ月バスクを旅してきました。
今回の旅には、小さな相棒を連れていきました。
それは、「写ルンです」。
今ではスマートフォンで何枚でも写真を撮ることができますが、今回はあえて、撮った写真をその場では見ることのできない写ルンですを持っていきました。
何を撮ったのか、その時にはわからない。
帰国して現像するまで、どんな写真になっているのかもわからない。
そんなちょっと不便なカメラと一緒に過ごした、今回のバスクの旅。
現像から戻ってきた写真を眺めていると、そこには「観光名所」だけではない、私がその時に見ていたバスクの日常が残っていました。
今日は、その中からいくつかの写真をご紹介したいと思います。
ビルバオのごみ箱

最初の一枚が、こちら。なんと、ごみ箱です(笑)。
バスクに到着して、最初に撮った写真がこれでした。
「なんでごみ箱?」と思われるかもしれません。
でも、私にとっては、なんだかとても残しておきたい風景だったんです。
バスクの街を歩いていると街のいたるところにごみ箱があります。
そして、街そのものもとてもきれいに保たれています。
日本では、街中でごみ箱をみかけるなんてほとんどありませんよね。
ごみ箱が「ある」ことで綺麗を保っているビルバオ、「ない」ことで綺麗を保っている日本。そこに思いを馳せてなんだか不思議な気持ちになりました。
そして私は、ビルバオが大好きなので、もう、ごみ箱まで愛おしい(笑)。
川を下って、ビスカヤ橋へ

これまでも何度も訪れている場所ですが、今回はいつもとは違う方法で向かいました。
ビルバオ市内からボートに乗り、ネルビオン川を下っていったのです。実はこのボートにずっと乗ってみたかったんです!
川から眺めるビルバオの街は、いつも歩いている時とはまた違って見えます。
見慣れた建物や風景も、川の上から見ると少し遠く感じられて、街全体を眺めているような気分になります。
そして、その先に見えてくるのがビスカヤ橋。すっごくかっこよかったです!
巨大な鉄骨の橋が、街と街をつないでいます。
何度見ても「すごいなぁ」と思う橋ですが、今回は川を進みながら少しずつ近づいていくことで、また違った迫力を感じました。
この写真はそんなボートでの旅を終えて、ビスカヤ橋を眺めている風景です。
ワイナリーで過ごした、暑い夏

今回の旅の大きな目的のひとつが、ワイナリーでの研修でした。
サラウツにあるモコロアというワイナリーで、一週間いろんな仕事をさせてもらいました。
この写真は、初日の仕事の風景。
何の作業の日か、わかりますか?
この畑は今年新しくブドウの苗を植えた区画で、苗の横に木の柱を立てていくという作業なんです。人が支えて、それを上から機械で押して地中に埋め込んでいきます。
ワイナリーを訪問して畑を見ると、当たり前にあるこの柱。ぶどう畑を作る最初の工程でこの柱を立てるという作業があることに全然いままで思いが至っておらず、今回初めて経験して「これもワインづくりの一部なんだ」と思うことが出来ました。
8年前にワイナリーで働いていて、その後も様々なワイナリーを訪問して、話を聞いたり、醸造の現場を見せてもらったりすることはありましたが、やっぱり現場の中から物事を見るということが私は大好きなんです。
暑さの中で畑に立つこと。
毎日の仕事を積み重ねること。
ワインができるまでには、こうした一つひとつの作業があること。
そして何より、ワインは「特別な日にだけ存在するもの」ではなく、誰かの日常の中でつくられているものなのだということ。
今回の研修を通して、改めてそんなことを感じました。
8年ぶりに見た、夏至のお祭り


そして、今回どうしても見たかったものがありました。
それが、夏至のお祭りです。
サン・セバスティアンの広場で行われていた、バスクの伝統的な踊り。
私は以前バスクに暮らしていた頃にこのお祭りを見たことがありましたが、今回見るのはなんと8年ぶり。
久しぶりにその光景を目にした瞬間、なんだか時間が一気に巻き戻ったような気持ちになりました。
広場では、伝統的な衣装を身につけた踊り手たちが踊っています。
その周りを、たくさんの人たちが囲んでいる。
そして、よく見ると、その中には踊り手たちの真似をしている子どもたちがいました。
大人たちの踊りを一生懸命に真似しながら、楽しそうに動いている子どもたち。
その姿を見ながら、ふと思いました。
次に私がここへ来る時には、この子たちが踊り手になっているのかな。
こうやって、その土地の文化は次の世代へ受け継がれていくのかもしれません。
8年前に見た景色と、今目の前にある景色。
変わったものもたくさんあります。
でも、こうして変わらず続いているものもある。
そんなことを感じた時間でした。
21時を過ぎても、まだ明るい

そして、夏至の日の夕暮れ。
サン・セバスティアンの日没はとても遅く、この日は21時を過ぎてもまだ空が明るくて、たくさんの人が海辺に集まっていました。
みんな、夕陽が沈むのを待っています。
海の向こうに太陽がゆっくりと沈んでいく。
誰かと話しながら待つ人。
海に入っている人。
ただ静かに夕陽を眺めている人。
特別なイベントというわけではないのに、そこにはたくさんの人が集まっていて、みんな同じ景色を見ていました。
私もその中に混ざって、夕陽を待ちました。
そして、空が少しずつピンク色に染まっていくのを眺めながら、
「ああ、またここに来られてよかったな」
と思いました。
「また来るね」と言って、帰る

サン・セバスティアンで過ごす最後の夕暮れ。
今回の旅の最後に見た景色です。
この写真を撮った時、私はきっと、またここへ来ようと思っていました。
今回の旅は、観光だけではありませんでした。
人に会い、ワイナリーで働き、友人と過ごし、街を歩き、バスクの文化に触れる。
そんなふうに、少しだけ「暮らす」に近い時間を過ごしました。
2018年に初めてバスクで暮らしてから、もう8年。
それから何度もこの土地を訪れてきました。
そのたびに、少しずつ関わり方が変わっています。
旅行者として訪れたこともあれば、仕事で訪れたこともある。
そして今回は、ワイナリーで働く側として、その土地の日常に少しだけ入らせてもらいました。
写ルンですに残っていたのは、そんな旅の中で私が見つけた、何気ない風景ばかりでした。
きっと私は、こういうものが好きなのだと思います。
有名な場所だけではなく、その土地で暮らす人たちの日常。
何気なくそこにある風景。
何年経っても変わらず残っているもの。
そして、その土地で過ごした時間そのもの。
今回の旅で撮った写ルンですの写真を見返しながら、私は改めて、バスクという場所が自分にとってどんな存在なのかを考えていました。
そして最後の写真を見ながら、心の中でひとこと。
「また来るね。」
そう言って、私はバスクを後にしました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではまたね!Agur!
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