服部公一「スペインあんな話こんな話」
W杯の思い出
Amets オーナーシェフ、2004年スペインに渡り、バスク・サンセバスティアンのイリサール料理学校を卒業後、地中海のメノルカ島でひと夏働き、マドリーで約2年間、その後カタルーニャ北部の村で約1年間、計5年半の様々な経験を経て2009年帰国。
翌2010年5月に地元浅草にAmetsオープン。店名のAmetsはバスク語で“夢”の意。
皆様はじめまして、浅草Ametsの服部と申します。このたび素敵なご縁をいただきコラムに参加させていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。
初回のコラムにあたり、どんなテーマにしようかと想いを馳せていると、朝の登校前の息子達がみているテレビでサッカーW杯日本代表のニュースがわずかに聞こえる、この瞬間ある思い出が鮮明に甦る、いつも4年に一度のW杯の時には必ず思い出す…
時は2006年ドイツW杯、スペインに、サンセバスティアンに住み始めて2年目を迎えていた、いくらかこちらの生活にも慣れ始め、海からほど近い場所に部屋を借りて生活していた。今日はW杯初戦VSオーストラリア、中田英寿・中村俊輔・小野伸二などを擁し、史上最強の呼び声高いジーコジャパンの初陣に心踊らずにはいられなかった。
住んでいる建物の1階には巷によくあるタイプの軽く飲めるバルがあり、満を持して店内へ、自分の興奮とは裏腹に店内はいつもと何もかわらない日常、、
そう、ここはスペイン、W杯の日本ー豪州戦など誰一人として興味は無い、
「オヤジさん、Caña(ビール)1つ、あとこれからW杯の日本の初戦だから、悪ぃんだけどテレビ変えてもらっても良いかな?」
「あー、そうなんだ。しょうがねぇなぁ。」
かくして自身人生初の海外で迎えたサッカーW杯初戦、期待され史上最強と謳われたタレント揃いの日本代表はこちらもスペインでは誰も知らないであろうオーストラリア代表に屈辱的な逆転負けをした。
「だから日本はサッカーなんて無理だって」
「お前たちの国はPlayStationのビデオゲームでサッカー学んでるんだろ?勝てるわけないよ」
なにも言わず僕の肩に手を当ててきて静かに首を何回も横に振ってくるおじさん
たかがサッカーされどサッカー、スペインにおいてはさらにその比重は重い、慰められながら何故か全てを否定されてるような虚しさと悔しさ…
実はこの年の3月に第1回WBCが開催され、メジャーリーガーのイチローを擁し、王貞治監督が率いる日本代表は優勝して世界一になっているのだ!
この誇り高き勝利も、野球なんてほとんど誰も知らないここではなんの意味も無いのだ…
いつかサッカーで世界を見返して欲しい!
この時から片時も離れずこの思いは自分の心の中で育まれた。
その後、日本サッカーは素晴らしい成長と発展を続けながら歴史をことごとく塗り替え、16年後、皆様の記憶にも新しい前回大会2022年カタールW杯でスペインを撃破する。
さあ、いよいよ2026年6月15日W杯初戦VSオランダ、日本を飛び出し彼の地で暮らす夢追い人たちが街角のバルで母国日本の勝利に酔いしれ、20年前の自分が成し遂げられなかった歓喜の祝杯を心ゆくまで楽しんでくれることを心の底から願うばかりだ。
周りのスペイン人達から「やっぱり日本のサッカーのレベルは大したもんだな!」と微笑みかけられながら。
Amets オーナーシェフ、2004年スペインに渡り、バスク・サンセバスティアンのイリサール料理学校を卒業後、地中海のメノルカ島でひと夏働き、マドリーで約2年間、その後カタルーニャ北部の村で約1年間、計5年半の様々な経験を経て2009年帰国。
翌2010年5月に地元浅草にAmetsオープン。店名のAmetsはバスク語で“夢”の意。
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